豊岡メソッド 人口減少を乗り越える本気の地域再生手法
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『豊岡メソッド』大崎麻子、秋山基・著 日本経済新聞出版
◆目次◆
はじめに
序 章 “構え”を作る
第1章 なぜ豊岡は“戦略的”なのか
第2章 働きやすく、働きがいのある職場をつくる
第3章 ジェンダーギャップ解消でまちづくりを
第4章 変わり始めた企業
第5章 動きだす人々
第6章 地域の魅力を生かす
終 章 豊岡メソッド
あとがき
著者は、コロンビア大学国際公共政策大学院を修了し、世界各地で女性の教育、雇用・起業、政治参加促進等のプロジェクトを手掛け、兵庫県豊岡市のジェンダーギャップ解消にも関与してきた大崎麻子氏と、日本経済新聞記者を経て、フリーランスとして活躍中の秋山基氏。
かつては若者が逃げ出す「過疎のまち」だった兵庫県豊岡市が、なぜ人気移住先ランキング1位(2020、SMOUT調べ)、住みたい田舎ランキング1位(2023・若者世代・単身者部門、宝島社調べ)に輝くことができたのか。
本書には、その理由と具体的な取り組みが書かれています。ビジネスであれ、地域再生であれ、事業で大切なのは「真因」を突き止め、正しいKPIを立てて愚直に実行することだと思っていますが、本書では、兵庫県豊岡市が何を衰退の原因とし、何をKPIとして取り組んできたのか、その詳細が書かれています。「若者回復率」、「女性の社会減」、女性従業員の3分の2以上が「働きやすくて働きがいがある」と評価する企業・事業所の数…。兵庫県豊岡市のKPIと、それを改善するための取り組みが事細かに紹介されていて、地域活性化に挑む方、女性活用に取り組む方には、参考になる内容だと思いました。
地域企業の取り組みや、事業展開の様子なども、これからの地域企業の人材活用や海外展開のヒントになると思います。
引用
地方から都市部に移動してそのままとどまる若年女性が多いことや、若年女性のUターン率が若年男性に比べてはるかに低いことは、国立社会保障・人口問題研究所の調査でかなり前から明らかにされてきた
金融庁が2022年から翌23年にかけて、各地の地方銀行100行を対象に実施した「人的資本アンケート調査」では、20代では男女の平均年収に差異はあまり見られないものの、40代では男性従業員の100に対し、女性従業員の平均年収はわずか37.5となっていた
「小さな世界都市」というタグライン
豊岡市では、地方創生戦略会議の副座長を務める中嶋圭介(神戸市外国語大学国際関係学科准教授)のアドバイスに従って、「若者回復率」という独自の指標を設定した。これは、5年おきに実施される国勢調査のデータを用いて、10代の転出超過数に対する20代の転入超過数の割合を導き出すものであり、この数値を見れば、まちを出ていった若者が5年以内にどのくらい戻ってきているのかが把握できる
2015年に実施された国勢調査の結果を基に最新の若者回復率(2010~15年)を計算したところ、驚愕の事実が判明する。全体では39.5%と前回より5.3ポイント上昇していたが、男性が52.2%と17.5ポイント上がっているのに対し、女性は26.7%と逆に6.7ポイントも下がっていたのだ
地方の人口減少の原因は出生率の低下ではなくて、女性の社会減
自治体で職員が新しいことができるかどうかは、首長が自分の頭で考えて一緒にやろうとしてくれるかどうかにかかっています
KPI(重要業績指標)は、女性従業員の3分の2以上が「働きやすくて働きがいがある」と評価している企業・事業所の数とし、2021年に5社、2023年に15社、2027年には50社に増やしていくという数値目標を設定した
働く女性の知識習得、スキルアップ、起業を支援するセミナー企画
1.豊岡みらいチャレンジ塾2022
2.働きたい女性のためのデジタルマーケティングセミナー
3.IPPO TOYOOKA(起業や事業の新展開を目指している市民のための無料相談窓口)
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ビジネススクールのケーススタディにしても良いくらいの濃い内容で、各種データもしっかり示されています。
男性は景気が悪くなると地方に戻ってくるのに、女性はあまり変わらないというのが面白いですね。
地方自治体の首長や公務員はもちろん、地域を元気にしたい中小企業経営者にも、ぜひ、読んでいただきたい内容です。